私は5年前の夏に体を壊し、医師から先の見通しは厳しいと言われていました。しばらくは再発の不安や、突然直面した死の恐怖で頭の中がいっぱいになり、気が弱くなったり、深く落ち込むこともたびたびでした。
そんな時に出会ったのが、「しんぶん赤旗」に月1回連載されていた清川妙さんの「心ときめきするもの 学び直しの古典」でした。恥ずかしながら、古典にまったく興味のなかった私ですが、たまたまその日の連載「徒然草 兼好法師の死生観ー無常の覚悟 存命の喜び」に、生き方をつらぬく太い柱を定めてもらったのです。
清川妙さんは、徒然草の一節を引用しながら、「人の死は突如訪れる。若いとか強いとか関係ない。今日、この瞬間を生きているという事実こそ、奇跡なのだ。だから、死を憎むなら、前向きに生きよう、生きていることを愛し、喜び、楽しもう」と、兼好法師の教えを自らの言葉に乗せて生き生きと語っていました。
夫が旅行先の信州で突然他界し、長男をガンで失った清川さん。「今から六百年以上も前に生きた兼好の思いが、今の私たちの心にぴったりと寄り添ってくれるのは、驚くばかりである。」というこの連載の結びは、清川さんから自然にあふれ出た言葉なのでしょう。
私も、古典、兼好法師にこんなにも生きる力を与えられるとは、思いもよりませんでした。
清川妙さん、ありがとうございました。
*清川妙さんの「しんぶん赤旗」の連載は、新日本出版社から「心ときめきするものー学び直しの古典」として発行されています。