「みなさんの周りには『どうしてちゃんとできないんだろう? もっとがんばればいいのに…』と思うようなことをする友だちがいないでしょうか」。こんな問いかけからお話しははじまります。
そして校長先生が小学生の時、クラスでほとんど発言しない女の子がいたことが話されました。その子は、たまに指名されても聞こえるか聞こえないかのような小さな声でしか話しません。
ある日、クラスの話し合いの時、「発言してほしい」と言われ、立ったまま何も言えなかったこともありました。その日の帰り道、偶然その子に会った校長先生は「どうして発言しないの?」と聞き、その子は顔を伏せて黙っていましたが、やがてポロリと涙を流したことがありました。校長先生は、ごめんねと言いながらも、「自分は間違ったことはしていないはず」と思っていたそうです。
そして大学に進んだ校長先生は、ある日、授業で大変なショックを受けました。「世の中には障がいのために家で普通におしゃべりできても、学校ではがんばっても話のできない子がいる」と教わったからです。校長先生はすぐにその女の子のことを思い出し、心の中で今度は、心から「ごめんなさい」と言ったそうです。
そして校長先生は、最後にこう結んでいます。
「話すことだけではありません。学校に来られない友だち、大勢の人の中にじっとしていられない友だち、授業で座っていられない友だち、『どうしてなんだろう』と思うようなことをする友だちを『がんばっていない友だち』と思わないでほしい。『何かわけがあるんじゃないか…』そう思える賢くて優しい人にみなさんは育ってほしいと願っています。」
以上